ばれいしょ君
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高校生の心に火を灯す授業「カタリ場」
あなたは夢を描けますか?
私は、今回のインタビューで「夢を描くことは、誰にでもできるわけではない」ということを聞いて、衝撃を受けました。確かに、夢や理想や目標は、誰かから「きっかけ」をもらった人にしか描けない、今はそんな時代なのかもしれません。

取材した認定NPO法人カタリバ(以下、カタリバ)が全国の高校で開催する「カタリ場」事業は、有名人の名言などではなく、普通の大学生や社会人の言葉の有用性を活かした取り組みです。高校生が夢を描くための「きっかけ」となるような場を、少し年上の先輩、つまり大学生や社会人が、学校の授業として提供するのが「カタリ場」です。カタリバの広報担当・本村ももさんは、こう語ります。


post_strong_01 カタリバの目標は、若者の「夢を描く力」を育むことです。そのきっかけが高校生と大学生という「ナナメの関係」から生まれるんです
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「ナナメの関係」とは、利害関係のある親や先生との関係(タテ)でもない、同じ視点になりがちの友達間の関係(ヨコ)でもない、少し年上の先輩(ナナメ)との関係のことです。その絶妙な関係が、若者の「夢を描く力」を育むきっかけになるというのです。

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「キャスト」と呼ばれるボランティア・スタッフによる{先輩の話}。大学生から高校生へ伝えたいことを、紙芝居形式でプレゼンテーションします。キャストは事前の研修を最低6時間受けます。全国に6000人以上のキャストがいます。

高校では、キャリア教育の授業として「カタリ場」を実施することが多いそうですが、その「カタリ場」の具体的な内容を、以下、順番にまとめてみました。

【カタリ場の一例】
①座談会(自己を理解する場)
・1学年分の高校生が体育館に集まる。(体育館は流行の音楽などが流れていて和やかな雰囲気)
・体育館には、複数のキャスト(ボランティアの大学生)が待っていて、高校生は話をしてみたいキャスト1人のもとへ行く。
・グループができあがったら、キャストは高校生に自己紹介をする。
・今度は高校生がキャストに自己紹介をしていき、対話が生まれる。
・ワークシートが配られ、印象に残ったことなどを書き留める。(高校生が自分を見つめることになる)

②先輩の話(ロールモデルを見つける場)
・①で話したキャストとは異なるキャストの{先輩の話}を聞きに行く。
・ここで言う{先輩の話}は、キャスト手作りの「自分紙芝居」を使って、自己を語るというもの。
・キャスト自身が過去に悩んでいたことや、大切にしたい価値観などが、紙芝居形式で伝えられる。
・高校生は、先輩の話を聞いて感じたことをふまえて、ワークシートを書き進める。

③約束(目標を設定する場)
・高校生は最後にキャストとの約束カードを作る。
・約束カードには「今日からできる小さな行動」を書き込む。

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カタリ場の様子

①で配られるワークシートは、自分のことについて書く欄と、先輩の話を聞いて思ったことを書く欄が、はっきり分けられておらず、意図的に融合されたレイアウトになっています。 そのシートは、先輩と話し、自分を語るという相互作用の中で、つまり高校生の「自己」が揺さぶられる過程で徐々に作られていくのです。 特に、②で{先輩の話}を聞くときには、「なりたい自分像」の具体例を目の当たりにし、自分の未来の姿をより鮮明に想像できるのではないでしょうか。 そのようにして高校生は深い自己理解をしながら、今自分が進むべき道が見えてくるものです。
最後に作る「約束カード」は、当日の経験や考えたことを未来へとつなげるツールになります。ささいな内容でもOKです。それでも、キャストとの約束であり、自分との約束でもあります。高校生の小さな決意が込められたカードは、ずっと大事に持ち続けている生徒もいるほど、思いの込められたものになります。


post_strong_01 きっかけって、ちょっとしたことなんです。でも、それがその人を大きく変える
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多感な時期、自分を見失いそうになる高校生も多いのではないでしょうか。 しかし、少し先を歩いている先輩と話すだけで、不思議と自分のことが見えてくるのです。 そこでなされる話は、「特別なこと」ではなく、「普段自分が思っていること」つまり本音です。 先輩も、特に輝かしい過去をもっていなくても「ありのままの過去」を話します。 そこに、対話が生まれます。

キャスト「そういうこと、俺もあった!」
高校生「お兄さんにもあったんだ!」

例えばそれだけでも、そこから安心感を得ることができます。 なぜなら、自分が進むかもしれない道の先に、お兄さんが居てくれているからです。 自分の道を試行錯誤して決めていく高校生にとっては、そのことがとても心強いのです。


post_strong_01 カツオくんにとっての、ウキエさん
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本村さんは、キャストのことをこう喩えていました。 確かに、サザエさんの世界には、日本にかつてあった近所のコミュニティがあり、なんでも相談できるような「ナナメの関係」が構築されていたような気がします。しかし、現代ではあまり存在しない関係なのではないでしょうか。

高校生は、ナナメからの刺激が体にしみこみ、何かが変わっていきます。
未来に向かうためのスイッチが入る、それが「心に火が灯る」ということなのです。
しかし、なぜ大学生のボランティア・スタッフが沢山集まるのか。


post_strong_01 話していると火がついた瞬間というのが分かるんですよ。何かこの子見えたんだなという瞬間です。鳥肌が立ちます。そうなると、私も頑張ろうと思います
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高校生と目線を合わせて対話するキャスト

本村さんによると、高校生の変化を目の当たりにした「先輩」にも、熱いものが胸に宿るのだという。 「高校生の頃の自分に言いたかったことが言える」という声も、キャストに多いそうです。 そのような大学生自身の充実感が、ボランティアの参加を呼び込むのです。

そして、カタリ場のようなナナメの関係が構築される場は、すでに高校の校舎を飛び出しています。 2015年4月、文京区の教育センターに「b-lab(ビーラボ)」という施設が開設されました。 b-labのスタッフである鮎川礼さんが語ります。


post_strong_01 1回きりのカタリ場も非日常でよいですが、その後も継続していく場があればなおよいと思い、b-labが始まりました。b-labは、中高生が集まる「秘密基地」がコンセプトです。大学生職員や、もう少し年上の大人職員との会話、背景の異なる中高生同士の会話も自然と生まれる交流の場です
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つまり、b-labの開設により、ナナメの関係が学校の外へと広がり、一度きりのカタリ場で生まれたつながりの「継続性」の担保もされてきています。 また、全国で、高校生が地域やコミュニティの課題を見つけ、解決するためのプロジェクトを立ち上げる「マイプロジェクト」という取り組みも盛んに行われています。「地域の課題が教育機会になる」という視点で、高校生の主体性を軸にした地域プロジェクトをカタリバスタッフが応援します。


post_strong_01 「夢を描く力」は、「生き抜く力」です
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最後にカタリバの東北復興事業である「コラボ・スクール」についてご紹介します。 「コラボ・スクール」とは、被災地の子どものための放課後学校です。 日常を奪われた被災地の子どもたちに、落ち着いて勉強する環境を提供し、心のケアも行っているそうです。 小学生から高校生まで約300名が放課後に通学しているとのことです。
そもそもカタリバ創設者・今村久美さんの立ち上げの動機は、 「環境に左右されて、夢を描ける若者と、そうでない若者が生まれる」 という状況を解消するために、良質な機会を提供していくことだったそうです。 夢を描く力は、生き抜く力になる。 そのような信念のもと、カタリバは様々な取り組みを展開しています。
「今後の展望は?」と聞くと、


post_strong_01 全国の高校生の3%にしかカタリ場を提供できていないので、カタリ場をもっと増やしたい。そして、それをきっかけにマイプロジェクトや他のステップアップへと進んでいってもらいたいです
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キャリア教育プログラム「カタリ場」は、過去にGOOD DISIGN賞を受賞しています。

本村さんは、


post_strong_01 ナナメの関係が自然と構築されるような社会になれば、カタリバは必要なくなる。最終的にはそれが理想です
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とも、語っていました。日本の教育を支える取り組みから、未来の高校生が主体的に社会で課題を解決していく姿が目に浮かんできます。

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取材に応じて頂いたカタリバ職員(左)本村さん/(右)鮎川さん




認定NPO法人カタリバ
カタリ場
b-lab

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