大木 祐二
monofarm編集室
編集長
mononfarmウェブマガジン編集長を務め、monofarmの発起人でもあります。
未来のものづくりはどういった「コト」や「モノ」であるのかを通じて、みなさんとのつながりを求めてウェブマガジンを立ち上げました。
monofarmから新しいものづくりの芽がたくさん育つことを目標に活動中。

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野人流忍術「野忍」がめざす、「和」でつなぐ全世界「忍者の里」計画
みなさんの周りに「忍者」はいますか?そもそも「忍者」の末裔である方や、ひょっとしたら忍びの者ゆえ、人知れず隣にいる人が「忍者」であるかも知れません。そんな、好奇心をくすぐる存在「忍者」を職業とする方の活動や取組に今回フォーカスしてゆきます。そこで、みなさんの「忍者」イメージとはどのようなものでしょうか?敵の陣地に忍び入り任務を達成する者、もしくは忍術や七つ道具を使った暗殺者、はたまた悪を懲らしめるヒーローでしょうか。今や世界的に有名な「忍者」ではありますが、実際のイメージは把握しづらい存在なのかもしれません。そこで、現役の「忍者」として活動される甚川 浩志さん(以下、「甚川さん」)の取組についてお話をお聞きしました。

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野人流忍術「野忍」代表の甚川さん

甚川さんは忍者歴5年の「忍者」であり、中でも野人流忍術「野忍」と称し活動されます。ひとくくりに「忍者」といっても、活動内容は様々なようです。甚川さんが務める「野忍」は、「野外環境」を活用した忍術修行体験を皆さんに提供し活動される「忍者」となります。それでは、「野忍」となったきっかけからお話をお聞きして行きます。


post_strong_01 「野忍」となったきっかけは、甚大な被害を被った東日本大震災という時代の潮目が変わるできごとでありました。それまで、私は企業向けのリスクマネージメント等の「経営コンサルタント」を生業としていましたが、それは「ルールによる組織づくり」を推進しPDCAサイクル(PDCAサイクルとは、Plan-Do-Check-Actのサイクルを意味し、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ)を回すといった考えをベースとしています。しかし、その考え自体が今後通用しなくなると感じ、野人流忍術「野忍」となりました。
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なぜ、これからの「経営コンサルタント」の形が、「野忍」であったのでしょうか。


post_strong_01 これからは、「脱マネージメントの時代」と感じていて、都内の真ん中で「経営コンサルタント」のような仕事をしていることも立ち行かなくなるなと。そこで、都内のマンションを売り払いここ東京都あきる野市養沢にきました。それは、企業の研修も会議室ではなく、「忍者」のように「野外環境」でミッションを与えて問題解決をしてゆく事が大切となると感じたがためです。
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もう少し話を掘り下げてお聞きして行きます。


post_strong_01 リーダーシップの話でも、チームビルディングの話でも、自然とマネージメントできなければ問題解決はできないと考えます。そこには、ルールが先にあるわけではなく、組織が先にあるわけでもありません。「野外環境」でマネージメントを自然に理解できる、ということをしっかりファシリテーションしさえすれば、大企業のピラミッド型の組織構造ではない、「小さな組織で事業計画などの意思決定をしてゆける」組織が育つことにつながります。忍者の里の多くは、大きな政府(強力な武将)の手の届かない山里で発達したといわれています。小さな集落が、周囲の情報を知り、相手を理解する。そうすることで交渉事を有利に進めると同時に、無益な争いを避ける。このような情報戦・心理戦に必要な技術や心構えがこれからの組織やマネージメントに必要に感じています。それは、時代の移り変わりが激しく、しかも昨日の常識が明日の非常識であるような現代であるからこそです。「この考えを実践するには新宿にいてはできない」と。そこから、ご縁がつながりこの地に移り、「野忍」となりました。実際この地には「北条」と「武田」がいたわけで、偶然にもリアルな忍者の郷でありました(笑)。
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「忍者」体験プログラムの様子

忍術でいう本当の強さとは、「戦って相手を制することではなく、戦わずして事を成すこと」と甚川さんは言います。野人流忍術「野忍」は武術道場ではないので、武術を伝えることを目的とせず、日本文化となる「和の心」を伝えます。そして、次世代の経営コンサルタントの形「野忍」をめざされます。


post_strong_01 現代はまさに情報戦であるので、「ハッカーが現代の忍者(良い意味で)」ということになるかもしれません。「忍者」は諜報活動と、防諜活動、もう一つは謀略です。あまり戦闘というものは入ってきません。戦国時代、傭兵として出ていくことはあったようですが、好んで戦いはしません。「忍者」はよく戦っているイメージが取り上げられますが、本来はそんな状況にならないようにするのが「忍者」の仕事であり、「和の心」を重んずる者であります。
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甚川さんの「野忍」の活動としては、


post_strong_01 現在は主に外人向けの体験プログラムと、子供向けの体験プログラムが中心です。どちらも、自然豊かな東京の里山で、忍びとしての心と技を磨く忍者修行を体験します。今後は、企業向けプログラムとして展開して行くことに注力したいです。
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日米の学生と共に開催された「忍者」体験プログラムの様子
(AST流忍術:黒影さん、赤影さん共同開催)

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幼稚園児向け「忍者」スクールの様子
(引用元:横浜市中区の森の幼稚園 かいじゅうの森船長日記

企業向けの体験プログラムとは?


post_strong_01 具体的にはサバイバルゲームを忍者仕立てに行う、「忍者サバゲ(忍者合戦)」なるものを今考案中です。
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この「忍者サバゲ」を考案するきっかけとして甚川さんは話します。


post_strong_01 以前、幼稚園児にボールを二つもたせて「旗取りゲーム」をしたことがありました。ルールは、ボールを当てられたらゲーム離脱となることと、旗を取ったチームの勝ちということだけです。やっているうちに、リーダー格となるような子が現れ、仲間に指示を送るようになるんです。それも自然発生的にです。そして、仲間に偵察に行かせ状況報告させたり、その情報を元に奇襲作戦を練り実行し出したりします。そういう取り組みが自然と生まれることは「組織が生まれること」であり、「組織の戦略づくりが養われること」でもあると思います。さらには、「思い通りにならなかった時の意思決定をいかに早く行えるか」というトレーニングにもつながります。そこで、「サバゲはばかにできないな」と。そこに「忍者の情報戦」というつながりを感じています。
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さらに甚川さんは続けます。


post_strong_01 この「旗取りゲーム」ならぬ「忍者サバゲ」のスタート時は、上官などの身分(役職)設定はないんです。誰もがリーダーシップをとれるようなかたちで展開されるわけです。そこは、適材適所です。企業研修をやった後「振り返り」をやりますが、そのなかで一つ一つの行動について分析をし、それを一般化します。そして、「これを自分の組織ではどう使えるのか」というところに落とし込んでゆく。これが企業研修でやることです。「忍者サバゲ」はまず、子供の遊びからできることでありますが、そこで終わらせてしまうのではなく「野忍」としてきっちりと企業研修に落とし込んでいくことが大切と考えます。そして、「忍者サバゲ」を地域で活躍されている方々と連携し始めて行きたいと考えています。
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と甚川さんは言います。「忍者サバゲ」の大切にすべき点として、


post_strong_01 大切なのはルールづくりではありません。ルールはその状況に応じて作っていけばいいと思うんです。実戦ではルールはないですから。逆にルールがあることで動けなくなってしまうことにもつながります。ルールはあまり決めつけないほうがいいという事です。しかし、コンセプトは大切なのでしっかりと決めなければなりません。例えば、サバゲでは相手を倒して点を取るみたいな部分がありますが、「忍者サバゲ」の場合はできるだけ敵も味方も損失を少なくして任務を完了したほうが優れているというコンセプトとなるべきと考えます。そのため、「味方も敵も殺さずにフラッグを取ってくる」ということが一番優秀なチームと言えます。
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「忍者サバゲ」用の当たっても痛くない忍者アイテムを目下開発中とのこと

そして、甚川さんが考える「忍者サバゲ」から伝えたい「和の心」として、


post_strong_01 スポーツ全般に言えますが、得点や時間を判断基準にして「勝ったものが正義」という概念があると思います。「忍者サバゲ」の場合はそうではないため、勝った時のガッツポーズは禁止します。そもそも、「忍者」が戦う時に使う弓矢や手裏剣などは、狩猟に使うところからきています。狩猟とは命のやり取りを意味しています。狩猟は相手が憎くて狩る訳ではありません。自分や家族、仲間が生きる為に行うわけです。戦いにおいても相手が憎くて戦う訳ではないです。それぞれの利害関係を元に命のやり取りをするご縁があったという訳です。そのため、相手に対する「尊重」が大切になってくるので、そこは「武道」の考え方です。的の先にいつも「命がある」ということを必ず意識することで重みのあるものとなります。やはり現代のスポーツのように、「勝ったら正義」でありガッツポーズをすることは、「和の心」を重んじた「武道」ではありません。勝手も負けてもお互いに敬意を払うような、根本的な「和の心」を、しっかりと発信してゆきたい。
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TEDxICUでの「野忍」プレゼンテーションの様子(引用元:TEDx Talks

力で制圧することが正義ではない世の中を築くこと。それが「野忍」の活動であり、「和の心」を重んじ伝えてゆくことであるようです。「野忍」の今後の目標として、


post_strong_01 よく「企業の戦略」という風に表現しますが、それは「勝者が正義」、「敗者が悪」になるという世の中の構造を感じます。しかし現在では、「勝者が正義」であるという価値観自体が破綻しかかっています。経済成長を全員が突き詰めていくと、どんどん格差が生まれてきます。また、皆が勝者になるような大量生産、大量消費型である世界は保つことができません。どちらにしても破綻します。日本の文化には、それを解決する「価値観」があります。それは、自然を敬い、共存して行こうとする日本古来の考え方と、新たな思想や文化を受け入れ融合させてきた「和」の考え方です。もともと日本にあった「和」の思考を、人や組織、そして生活の中に生かすヒントが、ここの里山文化にあるのではと考えます。「野忍」の活動を通じ、「和の心」を理解し、人がより良く生きるための術(活法)を、みなさんに提供することを目標とし活動してゆきたく考えます。
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自らを「野忍」と名乗り、都市から里山に移り住み「和の心」を伝え活動される甚川さん。子供や大人さらには海外の方々へ「忍者体験」を通じ「和の心」が伝わって行けば、世界全体が「忍者の里」となる日が来るのかもしれません。


野人流忍術「野忍」
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