大木 祐二
monofarm編集室
編集長
mononfarmウェブマガジン編集長を務め、monofarmの発起人でもあります。
未来のものづくりはどういった「コト」や「モノ」であるのかを通じて、みなさんとのつながりを求めてウェブマガジンを立ち上げました。
monofarmから新しいものづくりの芽がたくさん育つことを目標に活動中。

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「だれもが楽しめるユニバーサルデザインのゲームを作りたい!」ギフトテンインダストリの「ボードゲーム」へ込めた想い
世代や、言葉、時に身体的ハンデをも飛び越え、少数・多数問わず楽しめる「ゲーム」というもの・こと。現在では、「スポーツ全般」をはじめ「カードゲーム」や「ボードゲーム」などのアナログなものから、「テレビゲーム」や「モバイルゲーム」といったのデジタルなものなど多種多様の「ゲーム」があります。その中でも今回は、「ボードゲーム」にフォーカスしお話をお聞きすることができました。しかも、一般的な「ボードゲーム」ではなく、「視覚障害者と健常者の方が一緒に遊び楽しむことができるボードゲーム」となります。それでは、ギフトテンインダストリ 濱田隆史(代表)さん(以下、「濱田さん」)、佐藤仁さん(以下、「佐藤さん」)、梶川晴香さん(以下、「梶川さん」)へお話をうかがって行きます。

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「ギフトテンインダストリ」中央:濱田さん、右:佐藤さん、左:梶川さん
(今回の取材場所:東京都西国分寺にある「クルミドコーヒー」さんよりご協力いただきました)

まずはじめに、ギフトテンインダストリの起業経緯についてお聞きしました。

濱田さん: 私は大学卒業後の5年間、ゲーム制作会社の開発部門に携わっていました。ゲーム制作の基礎を学ぶこともでき、良き仲間とも出会うことができて大変得るものが多かったです。しかし、そこでは1つのゲームを作る上で様々なプロセスが分業化されていた感じで、プロジェクトの全体像を把握できないもどかしさも感じていました。そんな中、資金集めや広報、販売までをトータルでやってみたい!という想いもありました。また、自宅が東京都、勤務先が山梨県で、その間を往復しており家族もいるため「ずっとは続けられないな…」と。そして辿り着いた答えが、東京に戻って「起業する」ということでした。年齢的にみて「全てを自分でやってみる!失敗してもなんとかなる」と思える良いタイミングでしたね。
そう決めてから、濱田さんが会社を退職したのは1年後でした。その間「あずさ」に乗りながら(東京と山梨を往復する特急列車)、新しい事業を興すための「ネタ出し」をしていたようです。

濱田さん: 会社を辞めるまでに事業計画100案を出すことを目指しており、なんとか達成ができました。ネタを出す過程で「これが実現したら楽しいだろうな!」という気持ちが高まり、起業したいという気持ちが固まっていきました。例えば、「東京五輪に備えて、東京の空家をリフォームしてゲストハウスにしよう」ですとか、どのアイデアも全て現職(デジタルゲームの開発)の延長線上では実現できないことばかりでしたしね。そんなときに、佐藤くんに「起業する」ことについて相談したところ、佐藤くんも「チャレンジしたいことがある」という話もあったりして、一緒に挑戦したいとう想いが膨らみました。
佐藤さんとしては、どのような想いがあり濱田さんに賛同したのでしょうか?

佐藤さん: 僕は設計事務所にいたんで、一人で3D-CAD設計だけをこなしていたんです。なので、みんなで何かを作りたいという欲求はありましたね。パートとして、設計を自分一人でやるのは良いのですが、チームで一つのものをつくるということをやってみたかったんです。それともう一つは、今のおもちゃの作りは質が下がっていると思うんです。そのため「自分が全てに携われるのであればもっとこだわりぬいた物をつくりたい!」という想いがありました。お金の不安なども正直ありますが、今の年齢で挑戦し、自分が納得いくまで設計できたらいいなと思って賛同した形です。
そして、梶川さんのつながりについては、

梶川さん: 濱田さんの作品展示の場に行った時に誘われて(笑)。もともと大学の先輩という間柄でしたが、久しぶりに濱田さんが展示をやるという話を聞いて、その時はすでに1作品目となる「アラビアの壺」はできていました。その際、「視覚障害者向けのプロダクトをリリースしていこうと思うんだけど、広報やらない?」と。濱田さんの考え方がとても面白いなと感じて賛同しました。私自身は二人と違って絵描きながら契約社員したり、アニメーターしていたりと一箇所にはとどまっていなかったんで、「一緒にやってみようかな?」みたいな感じでした。
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ギフトテンインダストリ1作品目のボードゲーム:「アラビアの壺

このように、ギフトテンインダストリは濱田さんと縁の深い仲間での船出となりました。そこで、今回フォーカスする「ボードゲーム」開発についてお聞きします。

濱田さん: ギフトテンインダストリのメイン事業として、視覚障害者の方々と健常者が一緒に楽しめる「ボードゲーム」開発を行っています。僕らはこのような「ボードゲーム」を「ユニバーサルボードゲーム」と呼んでいます。いま1作品目のリリースが終了し、いま2作品目のリリースを迎えようとしています。いまは、RC版(主にハードウエアやソフトウエアの開発段階のひとつで、製品候補としてのテスト工程に入ったもののこと)と言われるところまで来ていますね(2015年5月現在)。
そもそもなぜ、「ユニバーサルボードゲーム」を作ろうと考えたのでしょうか?

濱田さん: 調べてみると視覚障害者向けのゲームはほとんどないんですね。既存のオセロや将棋に「点字をつけました」とかそういったものしかありません。今「ゲーム」といえば、スマホアプリなどですよね。それが毎週のように新作がリリースされているじゃないですか。でも、それは視覚障害者は遊べません。これは視覚障害者と健常者との間で娯楽の格差が生じてしまっているという事です。そこで僕らは視覚障害者でも楽しめる新作の「ボードゲーム」を作りたいと思ったのです。
濱田さん: とはいえ視覚障害者向けのゲームは、開発することがとても難しいのですが、「視覚障害者」と「ボードゲーム」はわりかし相性がいいんです。そこで、まず商品化したのが「音当て神経衰弱」という企画をベースに、「アラビアの壺」という1作品目の「ユニバーサルボードゲーム」をリリースしています。実際に、視覚障害者の方々でも遊べるゲームとなりました。2作品目が「クエスチョンズ」という企画をもとに、「ダッタカモ文明の謎」を開発しています。これは「手触り」を使用するゲームなので視覚障害者の方でも遊ぶことが可能となります。
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ギフトテンインダストリ2作品目のボードゲーム:「ダッタカモ文明の謎」
(クラウドファンディングサイト「READYFOR?」にてファンディング成功されました(2015年6月8日現在)

「ボードゲーム」に秘められた可能性についてお聞きしてみました。

佐藤さん: 「ボードゲーム」は、テレビゲームと違って会話が多くなるので、その分コミュニケーションがとれ、すぐにみんなと打ち解けられる「ゲーム」に感じます。僕はそんなにコミュニケーションが上手な方ではないのですが、「ボードゲーム」を通して話すきっかけが生まれるので、いろんな人と話しやすくなるツールとして、とても良いものなのかなと感じています。
濱田さん: もともと海外旅行が好きなのですが、英語が通じない場所があったんですね。だけど言葉が通じなくとも、「サッカー」は一緒にできるんですよ。あとは「カードゲーム」も。言葉がわからないんだけど、なにかしら一緒に遊べることってすごくいいなと。僕が言いたいのは、言語の壁みたいなものを飛び越えられるのも「ゲーム」の持つ力だと思うんです。同様にゲームは健常者と視覚障害者の壁を飛び越えられるツールになり得ると思います。
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「アラビアの壺」の開発アイデアとなる企画書(濱田さん企画)

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「ダッタカモ文明の謎」の開発アイデアとなる企画書(濱田さん企画)

「ボードゲーム」が「デジタルゲーム」より優れている「もの・こと」として、

濱田さん: 「デジタルゲーム」と比べて「ボードゲーム」が優れていると感じることとして、「ルールを変えられる」という点だと思うんです。「デジタルゲーム」はプログラムでできているため、遊ぶ人のクリエイティブが入る余地があるようでないんです。その点「ボードゲーム」は「ルール」がその場でどんどん作れるのでとてもクリエイティブなんでよね。僕が企画する「交流会」は、視覚障害者だからという配慮はせずに行おうと思っているんです。「これできないだろうな」という先入観は持たずに行うほうがいいかなと。とはいえ、「ゲーム」を始めるとやはりできないことがでてきます。そこで、みんなでどうやったらできるだろうかと考えるんです。そこから生まれた「ルール」ってすごくクリエイティブだと思うし、そこでできた関係性って素敵だと思うんですよね。そこがまた「デジタルゲーム」と比べて「ボードゲーム」の優れている部分だと思います。
今後の展望として、

濱田さん: この会社を始めてみて思うことは、仕事は「ものをつくるだけじゃないんだな」ということ。誰と一緒に仕事をするのか、そしてどうやってお金の循環をつくりだすのかと、それが仕事の醍醐味だということを実感しました。その点では、2作品目の「ダッタカモ文明の謎」の生産体制は、障害者施設さんとの仕事を作り出すことができました。なにか「ものをつくる」とうことは、その作る過程において様々な仕事を生み出すことができる、そのことが素晴らしいと感じています。
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Chika-ba]で開催される、ボードゲーム交流会「ヤホゲ会

ギフトテンインダストリの社名の由来は、「誰かのためにギフトをつくるような気持ちで製品を作ること。製造は10個から行うこと。」という想いが込められています。少量からでも開発・生産するギフトテンインダストリは、「ユニバーサルボードゲーム」を通じ「だれもが楽しめるゲーム」を贈り届けて行くことでしょう。


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