かみ monofarm編集室 staff
ものづくりに打ち込む方を応援します。カメラはフィルム派。

記事の絞り込み

ピープルデザインのやさしい服。「テンボデザイン事務所」の橋渡し。
当たり前のように毎日身に着ける「服」。「衣食住」という言葉が生活の基盤として存在しているように、服はわたしたちの生活において、欠かせない物の1つとされています。
みなさんはどんな服に身を包み、生活していきたいですか?
今回の記事で登場するのは、みんなが気持ちよく身に着けられる「やさしい服」。

吉祥寺にあるテンボデザイン事務所(以下「テンボ」)で、その服たちは生まれています。事務所の代表である、デザイナーの鶴田能史さん(以下「鶴田さん」)にお話しを聞かせていただきます。

tenbo1

取材時テンボデザイン事務所にて 代表デザイナー鶴田さん(写真左手前)

シャツ

(左)点字をモチーフにしたシャツ 点字の周知に繋げる
(中央)ぷっくりとした可愛らしいプリント 「夢」「希望」など 思いを込めた単語が並ぶ
(右)着やすさと綺麗なラインを兼ね備える

テンボで生まれる「tenbo(てんぼ)」ブランドの服は、障がい者も健常者も、分け隔てなく着ることができます。お茶目でちょっぴりいたずらゴコロのあるデザインがまず目を引きますが、一点一点に洗練された工夫が散りばめられています。

マグネットを使用した開閉が楽なシャツや、腕の上がりやすいジャケット。前後どちらでも着こなせるデザインや、床ずれを防止する縫い目のないデザインなど、個々の身体能力や性別、年齢、国籍に関わらず、誰もが気持ちよく身に着けられるデザインをコンセプトにしています。
このようなデザインを「ピープルデザイン」と呼び、最先端のファッションに組み込みながら、日本中に提案し続けています。

ピープルデザインを服作りに組み込んでいったきっかけについてお聞きしました。

post_strong_01 「障がい者でも着ることのできる、健常者と同じ服」がないな、と思ったことです。障がいを持った方のための機能性を重視した服はあります。けれど機能だけに目が行き、見た目の悪いものになってしまいがちです。逆に、最先端のモードを目指すデザイナーが作ったお洒落な服は、洗濯すらかけられない機能性に欠けたものばかりです。障がい者でも健常者でも気持ちよく着ることができる、そしてお洒落も楽しめる。そんな服があるといいな、と思いました。
post_strong_02

「tenbo」を作り始めた当初は「ユニバーサルデザインのブランド」とうたっていたそうですが、言葉の響きから抱かせてしまいがちな「障がい」のイメージに違和感を持ったそうです。先入観を無くし、本当の意味で分け隔てなく着てほしいという思いから「ピープルデザイン」という言葉を掲げているそうです。

コレクション

(右)前後どちらでも着こなせる服 撮影:越智貴雄
(左)ステージに上がる鶴田さんとモデルさん

IMG_9906

東京コレクション カーテンコールの様子

テンボの取組はコレクション1つを例に挙げても、関わる方への気配りが感じられます。
先日渋谷のヒカリエで行われた東京コレクションについてお聞きしました。

post_strong_01 人に見せるために行っているので、何よりもコレクションを見て下さる方の目線で会場をつくっています。ステージを高くして見やすくしたり、どこからでも見られるようにライブ映像をモニターで流したり。ブランドのリーフレットも、文字を大きく見やすくしたり、どんなブランドなのか・どんな人が登場するのか、分かり易い説明文を加える等しています。こういった見せ方は「格好悪いから」と、業界内ではあまり大切にされていません。ですが、背伸びをせずに、分かり易く伝えることがピープルデザインに繋がる要素の1つなのです。
post_strong_02

見て下さる方の元へ、作り手側から歩み寄ることが「tenbo」のやさしい服に触れてもらうための橋渡しに繋がっているように感じます。
ファッション業界では、コレクションと展示会を繰り返すことで、周知に繋げるといったパターンが存在しているとのこと。お決まりのやり方だけに流されるのではなく、手に取ってくださる方の目線で、「tenbo」と触れ合える新しい場を作りたいと鶴田さんはいいます。

tenbo5

目を通す方に分かり易く伝えようと工夫されたブランドリーフレット

IMG_9824

東京コレクション時のモニター  メッセージと共にランウェイから発信

そんなテンボデザイン事務所にて、ものづくりにおいて 最も大切にしていることをお聞きしました。

post_strong_01 素材を大切にしています。何を使い、どんな手法を使って加工するか見極める。素材を熟知しコントロールすることで、 より幅広い方に選んでもらえる服を作ることができます。 プリントがポロポロと剥がれてくる…擦れて痛い…肌触りが悪い。どんなに格好いい服でも可愛らしい服でも、そんなふうに着心地が悪かったら、2回目以降は着なくなってしまいます。 インパクト勝負のブランドにならず、まずは素材から機能性と着心地の良さをつくることを基盤にしています。
post_strong_02

シーンやデザインに見合った素材を選択するところからピープルデザインは始まっているのですね。

2020年には東京オリンピック、パラリンピックも控え、世界中のファッションもバリアフリー化が加速すると考えられます。流れに先駆け、日本のファッション業界の意識底上げに奮闘するテンボ。世の中が2020年に向けて動いている中、今後の展望をお聞きしました。

post_strong_01 オリンピックまでに業界の意識を底上げし、意識が変わってきたその先に何をやればいいのか…それを今模索しています。意識の変化は一過性のものなので、またすぐに廃れてしまいがちです。その時、「tenbo」としてファッション業界に対して何をするべきか、というところに視野を向けています。
post_strong_02
post_strong_01 オリンピック、パラリンピックをゴールとする人たちはたくさんいます。きっとそのゴールに達する前、そして後に、何かが起こると思うんです。そのときに「tenbo」は何ができるのかを考えていきたいです。
post_strong_02


周りのやり方に流されるのではなく、自分たちが大切にしたい思いを突き詰め、前を見据えることが、テンボのやさしい「モノ・コト」を形作っているのだと感じます。やさしい服とのふれあいが、みんなの心のバリアフリーを育むことに期待します。

tenbo4

テンボのイメージキャラクター「ヨミちゃん」のニットと鶴田さん

テンボデザイン事務所
2015-2016 A/W 東京コレクション 動画

関連記事