大木 祐二
monofarm編集室
編集長
mononfarmウェブマガジン編集長を務め、monofarmの発起人でもあります。
未来のものづくりはどういった「コト」や「モノ」であるのかを通じて、みなさんとのつながりを求めてウェブマガジンを立ち上げました。
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東京都森林組合の「森林を守り・森林を活かす」取組
これまでに、何度かふれさせていただいた東京の山の問題。私たちの身近な問題でありながら、日々の暮らしの中で気にとめ耳を傾ける機会は少ないのではないでしょうか。今回、東京の山の取組について、東京都森林組合さま(以下「東京都森林組合」)にお話をうかがいました。

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東京都森林組合 檜原加工所

森林組合とはそもそもどのような団体となるのでしょうか。

post_strong_01 森林組合は、森林組合法に基づいて活動・設置されます。詳しく言いますと、山主(森林の所有者)さまが、森林の保全や林業に関わる事業を共同で行うために設けられた団体です。協同組合の一種ですね。東京都森林組合は平成14年4月1日より、「八王子市」「青梅市」「あきる野市」「日の出町」「奥多摩町」「檜原村」の6市町村の森林組合が合併して東京都森林組合となりました。東京都の山林所有者(山主)はおよそ11,000人いらっしゃいます。そのうち約2,700人が森林組合に加盟されています。
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山主の方々が所有される「山」の木々の生産・管理・保全のために森林組合がその土地土地で設置されます。東京都森林組合は、その名の通り「東京都」の山々を管理されています。いったい、「山の管理」とはどのような「もの・こと」であるのでしょうか。

post_strong_01 私たちが行う「山の管理」の一番の目的は、林業経営を向上させ、いかに活性化を図るかが大きな役割です。具体的には、山主さんへの森林経営計画の提案(必要な山の手入れや伐採等の計画)を行い、山主さまに変わって「山の管理」をお手伝いします。
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檜原加工所から見える、東京の山林

post_strong_01 東京都内の森林は小規模での所有形態が多く、そのため、手間やコストの関係から、なかなか山の手入れや木材の生産ができない状況です。そこで、「山の管理」から「林業の活性化」までを一手に行うことができるよう森林所有者の方々が集まって組織したのが東京都森林組合なのです。
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現在、価格の安い輸入材の参入による国産材の需要の低下や、少子高齢化による林業後継者不足など林業を取り巻く情勢は、非常に厳しい状況にあります。こうした中で東京都森林組合では、小規模山林を団地としてまとめ、集約化によるメリットを生かした手入れを進めています。それによって作業の効率化やコストダウンが図られ、山々を適切に管理していけるようになります。

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檜原加工所の木工設備

東京都森林組合では、組合員の方々とともに、大きく分けて3つの事業を推進し取組まれています。

post_strong_01 一つ目は「森林整備事業」です。先にもお伝えした「森林経営計画」の策定・実施として、山の総合的管理(植付、下草刈り、根払い、間伐、枝打ち、伐採など)を山主さまと取決め、山に入らせていただきます。また、花粉対策として伐採後の植林を行う際に、花粉の少ないスギ苗や広葉樹を植えるなどし、スギ花粉の削減もめざします。二つ目は「加工・販売事業」です。伐採された多摩産材を、加工し販売することを目的としております。三つ目は「環境整備事業」です。こちらは、檜原村よりゴミ収集業務を受託し取り組んでおります。「山の管理」を行う私たちができる地域貢献のひとつであるとも考え携わらせいただいております。
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「森林整備事業」での山の総合的管理として、「植付、下草刈り、根払い、間伐、枝打ち」が主伐(出荷できる状態の木を伐採する作業)までの間に行われます。それは、一朝一夕に行われることではありません。木々を植付けてから毎年2~3回下草刈りを7~8年続け、10~15年経過後に、まず梯子を使わず手がとどく範囲で余分な枝を切り落とす作業「根払い」を行います。その次に、20~25年経過後に梯子をつかって高さ4mくらいまでにある余分な枝を切り落とし、次は30年前後で6mくらいまでにある余分な枝を切り落とす「枝打ち」を行います。その間に1~2回、曲がった木や成長の悪い木を間引く「間伐」が行われ、やっと一人前の木々に成長させることができます。「枝打ち、間伐」を行うことで、節のない真っ直ぐな木が育ち、花粉も削減され、森林の中に日が差し込むようになり山全体の環境も改善されます。一本の木が主伐できるまで、70~80年かかるとのことですから、世代をまたぎ一手に東京の山全体を管理する東京都森林組合の取組は大変重要であり、山主さんの負担も軽減され、森林の持つ公益的機能(二酸化炭素の吸収や土砂の流出防止、水源の涵養など)も促進されることにもなります。

また、「環境整備事業」として行われている檜原村のゴミ収集業務は、東京都森林組合の「山の管理」への責任や想いが感じられる取組となっているのではないでしょうか。

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加工後の多摩産材

post_strong_01 「加工・販売事業」についてですが、多摩産材の有効利用、地産地消という観点から、特に力を入れて取り組んでおります。昔は、間伐した木を山に放置しておくことがあったのですが、今は積極的に使っていく時代になっています。間伐材の主な使用事例として、集成材やガードフェンスがあります。
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最近では、専門の業者と協力して、間伐材が更に有効活用できる新企画製品がたくさん生まれてきているようです。

post_strong_01 柱や板にできないような細い間伐材でもスライスして「木毛」状にすることができるようになり用途に広がりがでています。この「木毛」を固め、消臭機能や調湿機能、吸音効果もあるレノウッド(内装用細木繊維化粧板)や、チップ化したものを樹脂で固め車の重みにも耐えられ、水はけがよく、ヒートアイランド現象も緩和されるウィードロック(硬木質舗装材)などが誕生しています。直近では「檜の畳床」が多摩の間伐材を使用した製品として注目されています。また、杉材を合板圧縮して波状に成形した手すりも開発されました。
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多摩産間伐材から作られた「木毛」

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木毛を使った「檜の畳床」(画像は30mm厚のもの。他50mm厚なども用意)

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「檜の畳床」を使用した和室イメージ

この「檜の畳床」は屋内用壁材技術の応用から生まれた製品とのことです。ヒノキを使用しているためカビやダニが発生する心配はいりません。しかも、製造は社会福祉の団体で行われており、就労支援にもつながるプロジェクトともなりました。

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「木製クネット」杉の波形手すりの設置例

そして、波形手すりは杉板を圧縮合板し、特殊技術で波形に成型した階段・スロープ用の手すりです。人間工学から生み出された波形形状より、体格に関係なく歩行をラクにするため、高齢者のお宅や施設には最適な手すりとなります。こちらの製品もまた木材として使いづらい、曲がりをともなった多摩の間伐材の有効利用先となるようです。

今後の東京都森林組合の展望をお聞きしました。

post_strong_01 これからも東京都森林組合では、私たちの暮らしを支えてくれている森林を守る為にさまざまな活動を行っていきます。そのためにも林業の活性化として、今後も多摩産材の有効利用について積極的に取り組んでいきます。また、みなさんからの、多摩産材を活用するアイデアやご相談など広くお待ちしております。
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取材に応じていただいた、東京都森林組合の方々

みなさんのアイデアが、一世代では完結しない東京の山の取組を継続・推進する原動力となり、私たちの暮らしや環境を守る大切な「もの・こと」としてつながって行きます。


東京都森林組合

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