大木 祐二
monofarm編集室
編集長
mononfarmウェブマガジン編集長を務め、monofarmの発起人でもあります。
未来のものづくりはどういった「コト」や「モノ」であるのかを通じて、みなさんとのつながりを求めてウェブマガジンを立ち上げました。
monofarmから新しいものづくりの芽がたくさん育つことを目標に活動中。

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「多摩ファブスペース研究会」倉本さんが目指す、『ものづくりのバリアフリー化』
一昔前は、みんなが一様なトレンドを追いかけ、ヒット商品が数々誕生するような時代でありましたが、現代は個々のトレンド(価値観)は複雑に多様化し、オンリーワンの「もの・こと」に注目が集まりつつあるように感じます。それに応えるように、みんなの「つくりたい!」も手軽に楽しめるようになり、表現の幅も広がりをみせています。

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「自分たちの使うものを、使う人自身がつくる文化」を醸成することを目指す、「FabLab Japan

みなさんの「つくりたい」が比較的簡単に叶えられる時代へとなりつつある背景に、デジタルファブリケーションの到来や、 FabLab(ファブラボ)を代表とする取り組み「ものづくり」のオープンソース化があげられます。今回このような「ソーシャル・ファブリケーション」とされる取り組みにフォーカスし、皆のためになるものづくりを推進される、御歳68歳の倉本 義介さん(以下、「倉本さん」)にお話をうかがいました。倉本さんは、FabLabの活動に感銘を受け自身でも「多摩ファブスペース研究会(facebookグループページ)」の運営者として現在活動されます。倉本さんのキャリアは幅広く、セスナ整備士から空撮による特殊計測業務、そして大手メーカーの教育用ビデオや製品マニュアル制作者としてご活躍されてきました。では、現在倉本さんが「ソーシャル・ファブリケーション」に取り組むこととなるきっかけはどのような「もの・こと」からだったのでしょうか。

post_strong_01 独立起業し、大手メーカー製品などのマニュアル制作プロダクションをはじめた頃は正に、飛ぶ鳥を落とす勢いでした。その後、バブル崩壊とともに、徐々に経営が苦しくなり、そして東北沖地震の影響もあり仕事がほぼなくなりました。その最中、「ソーシャル・ファブリケーション」 に早くから注目していた私の知人から、「ソーシャルファブに興味ある?」との誘いがあり、私は元来「ものづくり」に興味があったので、絶好の機会だと考えて「Fabの 世界」に突き進んだ形です。
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倉本さんに声をかけた方は、大分県に本部を置く公益財団法人ハイパーネットワーク社会研究所の 理事長・所長を務める、会津 泉さんとのことです。この機会からファブ関係の研究会傍聴やイベントへの参加、全国のFabLab巡りが始まり、「ソーシャル・ファブリケーション」の礎を築かれたか方々との出会いとつながりが形成されることとなります。そして「多摩地区へのFabLab誘致」への想いが倉本さんの中に芽生えると共に、「多摩ファブスペース研究会」の運営も始められたようです。

post_strong_01 「ソーシャル・ファブリケーション」を推進する、FabLabの魅力は全世界のFabLabとインターネットでつながっていることです。FabLabで誕生した「ものづくり」はオープンソース化が基本であり、生まれたものづくりは誰でも使うことができます(営利目的を除く)。そのため、FabLabは自分が作ったものが一斉に世界中のFabLabに広がり、ビジネスチャンスの可能性もあるということでもあります。
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そして倉本さんは「自分でも何かものづくりを始めないと何も始まらない」との想いから、倉本さんの「ソーシャル・ファブリケーション」がスタートします。

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倉本さんが自分用に作成した「箸アダプター」の3D-CADデータ

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「箸アダプター」を、手軽に購入できるデスクトップ型の3Dプリンターで造形出力

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左の青い箸は福祉用の既製品で、高額だが2年くらいで壊れてしまうとのこと。右側の倉本さんの箸アダプターがあれば普通の箸だけでなく割箸も使え、さらにコストも安い優れもの。もし壊れても3Dプリンターさえあればすぐに作り直すことができ、使う人に応じてサイズを変えることもできる。

post_strong_01 15年前に頚椎損傷による障害を負ったことで、「どうせなら自分が使いたいもの、そして同じような障害者でも使えるものをつくろう!」と考えました。
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そこで倉本さんは、安価でかつ自ら組み立てる事が可能な木製の電動スクーターを設計・開発しその技術をオープンソース化し、同じような障害を持つ方々に提供したいとの目標を掲げます。

post_strong_01 国産の電動スクーター(ハンドル形電動車いす)は「高価」なだけでなく「分解できない」ため車につめません。もし、自分で簡単に分解できて車に積み下ろしができ、しかも安価な電動スクーターができれば、車で出かけた先からさらに行動範囲が一気に広がります。そうすれば、私たちのような障害者がよりアクティブな生活を営むことができるようになります。
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倉本さんが設計・デザインされた「木製の電動スクーター」

こういった倉本さんの想いに台湾メーカーが応え、木製電動スクーターの重要なパーツとなるアクスル、タイヤ、モーター、そしてモーターを制御するコンピューターなども破格で提供いただけたようです。

post_strong_01 目的も無く何か新しいものをつくろうとすると、そのものづくりが義務感に感じて結果何も生まれないということが多々あります。まずは、日々の生活の中で不便を感じていることを改善したり、壊れたものを修理するなど身近なことから始めることが大切だと感じます。そして、「ものづくり」に興味を持つ人が集い、その中からアイディアが生まれ、お互いの知識を共有したり補いながら「もの・こと」をクリアーしていくことがFabLab精神だと思います。
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台湾メーカーから破格で提供してもらったディファレンシャルユニットとタイヤ(後輪に使用:左下のもの)。右下は日本製のノーパンクタイヤ(前輪に使用)。

倉本さんは、安価で便利で使いやすい福祉用具を障がい者目線で開発して行きたいと話します。そして障がい者自身が自分のための「もの」を作ることができるFabLabを普及させたい。まさに『ものづくりにおけるバリアフリー化』をめざされます。

post_strong_01 「自分に役立つものをつくりたい」そこから、つぎの「ものづくり・ことづくり」に発展し、みなの役に立てればと感じています。
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倉本さんの今後の目標としては、

post_strong_01 やっぱり、多摩にFabLabを誘致したい!
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倉本 義介さん

まさに身をもって切り開いてゆく、倉本さんの『ものづくりのバリアフリー化』から学び、FabLabの考えにもある「自分たちの使うものを、使う人自身がつくる文化」が私たちの身近に広まりつつあるのかもしれません。


多摩ファブスペース研究会(facebook)

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