大木 祐二
monofarm編集室
編集長
mononfarmウェブマガジン編集長を務め、monofarmの発起人でもあります。
未来のものづくりはどういった「コト」や「モノ」であるのかを通じて、みなさんとのつながりを求めてウェブマガジンを立ち上げました。
monofarmから新しいものづくりの芽がたくさん育つことを目標に活動中。

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「東京の日本酒のおいしさを伝えたい」 世界に届け!東京都酒造組合『情熱の取組』
東京都酒造組合の組合員は10社(休蔵1社含む)が酒造に関わっています。(2014年11月現在)。東京都に10もの蔵元があることはあまり知られてはいないのではないでしょうか。

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東京都で酒造業が発展したきっかけは、徳川幕府時の老中「松平定信」が発した「諸事倹約の令(節約をしなさいという命令)」に関係があるようです。その時代、お江戸は急速に発展しており、人口が増えるにつれて、飲食の需要も拡大し、庶民の生活が華美な傾向となっていました。そこでこの「諸事倹約の令」が言い渡されるのですが、これは江戸の民衆の酒代がどんどん関西に流れてしまっている経済摩擦の解決策として発せられました。幕府は寛政2年(1790年)地元の有力酒造家11軒を集めて優良酒製造の相談を行い、幕府所有米14,700石(2,205トン)を貸し与えて上精白酒3万樽の製造を命じました。こうして誕生した優良酒は、江戸表で「御免関東上酒売捌所」の看板で直接江戸の民衆に販売されました。この頃から江戸の酒造業が一段と発展したと言われています。

東京都の10(1社休蔵中含む)の蔵元からなる東京の地酒、国酒でもある日本酒を広めるため東京都酒造組合さまが取り組まれています。昭和28年に東京都酒造組合として設立され、今年で61年目を迎えます。今回、東京都酒造組合 事務局長の岩田 茂さん(以下「岩田さん」)にお話をうかがえました。東京都酒造組合さまの活動・事業内容とはどのような「こと」や「もの」なのでしょうか。

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「東京都酒造組合」事務局長 岩田 茂さん

post_strong_01 東京都酒造組合の役割として、日本酒の原材料となるお米の調達があります。調達したお米は東京都の蔵元へ供給されます。一部の蔵元は自分たちでお米の調達を行っていたりもします。契約しているお米農家さまと、毎年お米の必要数量を取り交わしておりますが、お米は天候に左右されやすいため、毎年収穫量が異なります。今年は、天候不順が続いたため、なかなか希望数量通りお米を調達することは難しい状況です。こういう年は気持ちがブルーになってしまいますね。
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今年は、全国的に天候不順が続き甚大な被害をももたらしました。原材料をお米とする日本酒は、もちろんのこと日本の気候と繋がり深く影響をうけます。このように予測できない自然と同調しながらつくられる東京の日本酒のおいしさを、みなさんに広める役割も東京都酒造組合は担います。

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「武蔵の國の酒祭り2014」会場の様子

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「東京の蔵元」コーナー

post_strong_01 今年9月に日本各地のご協力を得て実現された、東京都酒造組合主催のイベント「武蔵の國の酒祭り2014」を通じて、全国より147種のお酒を取り揃え、多くの方々にお酒を楽しんいただける場となりました。若い人のお酒離れにより、日本の国酒が日本酒ということも最近忘れがちとなりつつあるようです。このような状況のなかで、日本酒のおいしさに触れる良い機会となりました。
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しかもこの、「武蔵の國の酒祭り2014」のイベントは、「Musashino-kuni Sake Festival 2014」として、在日外国人の方々に向けて情報発信を行い、日本酒のおいしさを海外にも伝えるため取組みされています。

post_strong_01 全国的に見ても、酒蔵は年々淘汰されつつある状況です。何か手立てをしなくてはいけないなかで、最近では日本への海外からの観光客が増えつつあり、そしてあらゆるインフラの発達によりグローバル化が進んできているため、外国の方にむけた日本酒のおいしさを伝える取り組みを始めました。国内で低迷しているのであれば、国外を視野に入れ新しい門を開いていくということです。 post_strong_02

とはいえ、日本酒はデリケートであるため輸出した際の味の劣化の問題や、海外の仕入業者(バイヤー)との関係性の構築など大きなリスクが生じると岩田さんは言います。であれば、在日外国人の方々にまず日本酒を知ってもらい、そこから海外に広めていただくことを考え取り組み始めたそうです。

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在日外国人の方々に向けた「Musashino-kuni Sake Festival 2014」のイベント紹介

post_strong_01 始めは東京都酒造組合のオフィスに、在日外国人の方々を招いて試飲会を開催しました。知人や関係機関を通じ、在日外国人の方々に声がけし開催しましたが、その時は参加者3、4人とあまり奮いませんでした。 post_strong_02

これを教訓に企画されたイベントが「武蔵の國の酒祭り2014(Musashino-kuni Sake Festival 2014)」でした。このイベントの舞台となるのは、パワースポットとして有名な大国魂神社となります。神社は外国人の方に好まれる場所であり、しかも大国魂神社にはお酒の神様が祀られている『松尾神社』が鎮斎されているそうです。

post_strong_01 ここまで条件が整っているのであればせっかくの機会となるので、皆で「武蔵の國の酒祭り2014(Musashino-kuni Sake Festival 2014)」を開催させようと頑張りました。
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日本人の参加者からは、イベント参加費をいただくこととなりましたが、在日外国人の方々は無料としたことも功を奏し、50人を超える在日外国人の方々がイベント参加され、当日券も整理券を配るほどの盛況となりました。岩田さんはさらなる取組みとしてこのように話されます。

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お酒の神様が祀られている『松尾神社』

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「武蔵の國の酒祭り2014」で日本酒を楽しむ在日外国人の方々

post_strong_01 ”羽田や成田空港内での試飲会を通じた日本酒販売の試みや、2020年のオリンピック需要を見越し東京ブランドのお酒(日本酒)を創るプロジェクトも既に始まっています。東京の酒蔵が集まり各蔵のお酒を最適にブレンドし、日本を代表するような日本酒を造りあげようと取り組んでいます。その分手間はかかりますけど。
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にこやかに応える岩田さんの眼差しからは、並々ならぬ熱意と酒蔵の方々の一致団結した意気込みが感じられます。「東京」というブランドネームを決定するにあたり、やはりあらゆる商標登録がなされており難航したようです。そこで東京都酒造組合が昔銘柄取得されていた「東京銘醸倶楽部」というブランドネームが使えると分かり、東京ブランドの日本酒銘柄として起用となりました。

post_strong_01 東京の酒蔵の取り組みにより、ストーリー性のある日本酒が産まれることに皆期待しています。このように話題性の高い日本酒は東京土産としても国内外含め、皆さまに提供させていただける良い機会となると感じています。これに尽きるのではなく、大変ではありますが各酒蔵の方々からも自発的にオリジナル商品開発をおこなっていただければと思います。
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続けて岩田さんは話します。

post_strong_01 話題性のある酒蔵オリジナル商品を造る取組みは酒蔵の方々の判断でなされることですが、私たちを取り巻く環境は日々変化しています。そこを上手く捉え、ある種日本文化の代表でもある伝統的な「もの・こと」として伝え造られる国酒日本酒を、多くの方に知っていただく取組となるよう皆でつなぎ広めてゆければと思います。新しいことをするということは、とてもパワーが必要ですが、いつまでも同じ事をしているだけではなかなか新たに広まってはいきませんからね。
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メディアから取材を受ける、イベント参加中の在日外国人の方

終始穏やかに話される岩田さんの言葉には、日本や地域が抱える課題や問題となる「もの・こと」としての重みを感じます。暮らしを真に豊かにするこれからの「ものづくり」に大切なこととして、

post_strong_01 色々な「ひと・こと・もの」とコラボレーションしてゆくことが大切だと感じています。よっぽどオリジナリティや独創性の高い「もの・こと」でない限り、なかなか良い結果につなげることは難しいと思います。「武蔵の國の酒祭り2014」のイベントや、「東京銘醸倶楽部」の東京酒蔵のコラボ商品開発など、話題性の高い素晴らしい取組となる背景には、多様な「ひと・こと・もの」のつながりや協力があってこそです。「武蔵の國の酒祭り2014」では、もちろん私たち東京の日本酒を知っていただきたい想いでスタートしましたが、日本全国の酒蔵の方々も、自分たちの地域のおいしい酒を東京で多くの方に知っていただきたいという同じ想いを共有できたからこその「つながり」と「協力」を得られたものと感じています。お互いに良い立場でコラボレーションできる場を創ることが「ものづくり」において一番大切なことではないでしょうか。
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と岩田さんは話します。いつもの考えや、場所・景色でなく、ちょっと目先を変えてみる、変えられる場を選ぶ大切さを改めて感じました。岩田さんは、お酒を女性だけで造ってみる提案を酒蔵にされたそうです。酒蔵の方の反応は初めは難しそうにしていたようですが、「面白いかもしれない。」と検討を始めるようです。女性だけでの日本酒作り。ちょっと目先を変えるだけで、そこに目を引くストーリーが生まれます。自分だけではない他者の意見を聞き入れる柔軟さを日頃から培ってゆくことが大切と、岩田さんは私たちに伝えているのかもしれません。


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「武蔵の國の酒祭り2014」の盛況ぶりがうかがえる

最後に、東京都酒造組合の今後の展望についてお聞きしました。

post_strong_01 私たち東京都酒造組合の役割として、「武蔵の國の酒祭り」や「東京銘醸倶楽部」などの取組を通じ、また新たなつながりをつくりつつ東京の日本酒を多くの方に知っていただく良い場を創っていけたらと考えています。なかなか実を結ぶような「もの・こと」は少ないなかでも、スクラップアンドビルドを繰り返しながら、新たな「もの・こと」にチャレンジしてゆき、少しでも日本の国酒である日本酒、そして東京の蔵元を知っていただくよいきっかけを創っていければと感じています。
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  岩田さんは常にメモとボールペンを枕元に置いて寝ているそうです。思いついたら書き留める。そして、提案してはあらたな取組みとなりつながります。「東京の日本酒のおいしさをみなさんに伝えたい!」という岩田さんの情熱が、みなさんに届き大きな話題となって全国そして世界につながってゆくのかもしれません。


東京都酒造組合

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