大木 祐二
monofarm編集室
編集長
mononfarmウェブマガジン編集長を務め、monofarmの発起人でもあります。
未来のものづくりはどういった「コト」や「モノ」であるのかを通じて、みなさんとのつながりを求めてウェブマガジンを立ち上げました。
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新しい「ものづくり」に明かりを灯す、「川口鋳物工業協同組合」
埼玉県川口市元郷にあります、「川口鋳物工業協同組合」さまに、 「ものづくり技術の原点」となる「鋳物工業」についてお話を伺えました。 1905年8月11日に前身となります「川口鋳物業組合」が創立され、 1949年8月30日より現在の「川口鋳物工業協同組合」となりました。ゆうに100年以上の歴史ある団体となります。

「鋳物技術」は、歴史ある「ものづくり技術」であり、その歴史は紀元前4,000年のメソポタミアで始まったといわれています。銅を溶かして型に流し込み、いろいろな器物をつくったことが始まりとされ、鋳物は人間の「ものづくり」の中で、最も古い技術のひとつといえます。このように、歴史ある「鋳物技術」にフォーカスし、「川口鋳物工業協同組合」事務局長 岡田光雄さん(以下「岡田さん」)にお話をお聞きします。

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「川口鋳物工業協同組合」事務局長 岡田光雄さん

「川口鋳物工業協同組合」の取組みは主にどのような取組みとなるのでしょうか?

post_strong_01 主な取組みとしまして、埼玉全域の組合員(鋳物工業)に必要な銑鉄その他各種資材の共同購入を行なっています。また、鋳物の引張試験や分析試験、そして鋳物の型をつくる際に使用する「砂」の再利用事業、共同受注事業があります。共同受注事業は、1988年4月にスタートし、公共鋳物製品の需要開拓事業で川口市、公益財団法人川口産業振興公社並びに各自治体のご協力を得て実現した事業です。主に、公共事業とされる鋳物製品の企画・製造となり、街路灯、モニュメント、時計塔、門扉、路面化粧盤、記念品等多種多様にわたっています。鋳物の型をつくる際に使用する「砂」は、昔は荒川砂を使用しておりました。鋳型の役目を終えた砂の再利用事業として、現在主に道路舗装補助材として廃砂を有効利用しています。最近では、廃砂を原料とした「リサイクル消臭剤 人工ゼオライト」が経済産業省の産学官共同研究により開発されています。
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左上:国立競技場聖火台、左下:JR川口駅看板、右上:路面化粧盤、右下:記念品


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ECOMONO」(「リサイクル消臭剤 人工ゼオライト」製品:永井機械鋳造株式会社

「鋳物の街・川口」とされますが、昔と現在の変遷を感じることとして、

post_strong_01 「キューポラのある街」として有名となった「鋳物の街・川口」は、昔(戦後間もない頃)は、埼玉全域で個人経営も含め600組合員数を誇りました。その頃の鋳物工業の事業内容は、産業向けの鋳物工業ではなく、まだまだコンシューマー向けの製品(代表的な物として鍋・釜など)が中心でした。その後、高度経済成長を背景とした産業発展の後、鋳物工業は大型鋳物工場となったため組合員数も現在の128組合数に集約されていくこととなります。そのため現在では、産業部品中心の「鋳物工業」となり、一般の方が普段目にする所で「鋳物製品」を見る機会がすくなってしまったと感じます。「鋳物の街・川口」とされる川口市の若い方々でも、「鋳物」と言われイメージできない方が増えました。
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と岡田さんは話されます。

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「川口 武州釜」(国立競技場の聖火台を製作された鋳物職人、鈴木 文吾さん監修の作品)

「鋳物の街・川口」が産業中心の鋳物工業となり、若い方達が「鋳物技術」について知る機会が少なくなりつつある現状を踏まえ、「川口鋳物工業協同組合」さまの地域に根ざした取組みも行われています。

post_strong_01 川口市内52校の小学3年生の社会科教育の授業に、鋳物工場の工場見学を取り入れていただいたり、小・中学校に簡易の鋳物設備を持って行き出張授業を開催し、若い方へ「鋳物」について知見を深めていただく良いきっかけとなっております。そして、鋳物技術伝承の好例としまして、「KAWAGUCHI i-mono」ブランドプロジェクトの一環として川口鋳物職人の匠の技でつくられた「お鍋とフライパン」があります。これは、川口の地場産業活性化を目的とした川口商工会議所ジャパンブランド事業において「Ferramica(フェラミカ)」ブランドとして誕生しました。他のブランド鍋と比べ引けを取らない、もしくはそれ以上の高品質・高性能となる製品です。この取組みは市民、中小企業と一体となって「鋳物技術」だけではない、「川口の良い技術」を推進する取組みとなります。このような取組みもまた、今後大切にすべき「もの・こと」と考えます。
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鋳物職人の匠の技でつくられた、ブランド「Ferramica」(フェラミカ)のお鍋とフライパン


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「KAWAGUCHI i-mono」ブランドプロジェクト

これからの「ものづくり」として、大切にすべきこととして岡田さんはこのようにも話します。

post_strong_01 日本はやはり「ものづくり」がなければ生きて行けない国であると思います。その原点となる技術の1つとして、私たちの「鋳物技術」があると思います。このような「素形材産業」となる「鋳物技術」はあらゆる「製造業・産業」の出発点と今後もなることと思います。
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岡田さんは今後の推進課題として、技術・技能を活かした商品力の強化、地域連携、人材育成をあげます。「ものづくり」に必要とされる「鋳物技術」は、最も古い「ものづくり技術」のうちのひとつでもあり、いままでもこれからも常に「鋳物技術」には、「人・地域・技術」の連携で推進されてゆく「もの・こと」のように感じます。

国立競技場の聖火台は川口の鋳物技術で創られました。そして、新国立競技場の聖火台も再び川口の鋳物技術で提供したいと既に取組まれています。新しい「ものづくり」に灯る火は常に日本の「鋳物技術」からはじまるように、次の聖火台も川口の「鋳物」から始まる事を期待してやみません。

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「新国立競技場 聖火台」のデザインイメージ


<東京藝術大学 美術学部教授 橋本明夫さんよりメッセージ>
2020年の東京オリンピックにも、新たな聖火台、選手村や関連施設などを彩る景観鋳物の魅力溢れる演出が参加選手やそこに集う世界の人々の心に永く刻まれる最上級のおもてなしとなることを期待いたします。
出処:「伝統と革新 〜おもてなしのものづくり〜 川口市」(発行:公益財団法人川口産業振公社)


川口鋳物工業協同組合

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