大木 祐二
monofarm編集室
編集長
mononfarmウェブマガジン編集長を務め、monofarmの発起人でもあります。
未来のものづくりはどういった「コト」や「モノ」であるのかを通じて、みなさんとのつながりを求めてウェブマガジンを立ち上げました。
monofarmから新しいものづくりの芽がたくさん育つことを目標に活動中。

記事の絞り込み

地域課題を多摩産材で一つに丸くつなげて解決する
松尾木工所の「端材」プロダクト。
最近、メディアでもよく取り上げられるようになった、東京の山の問題。

多摩産材自体があまり使われなくなってしまっている状況がもたらす問題なのですが、私達の身近な自然環境にも影響を及ぼし兼ねない問題でもあります。東京都西多摩郡日の出町にある、「松尾木工所」の松尾 功さん(以下松尾さん)は、多摩産材を普及させるため、宮大工の匠の技と現代技術を駆使し精力的に東京の山が抱えているさまざまな問題解決に向け取組されています。

「松尾木工所」は100年以上の歴史があり、松尾 功さんで4代目となります。「松尾木工所」のはじまりは、初代松尾一丸さんが営まれた「松尾製材所」からで、いわゆる「きこり」を生業としていました。今では「きこり」と聞くと、昔話によく登場する人物をイメージする方が多いのではと思います。斜面がきつい東京の山で、昔は1本1本斧で木を切り出し、人力で山から木を下ろして来たそうです。現代人はそこまでタフでは、もはやないのかもしれません。

2代目松尾喜三、3代目(父)松尾光雄より、葬儀で使用する骨箱や棺・塔婆などの小物製作を行う木工業がスタートしました。多摩地域の製材所(林業を営む方々)の数は少なくなったと松尾さんは言います。その背景として、多摩産材の負のサイクルがあります。

tama_funo_cycle

多摩産材の負のサイクルイメージ

そして、荒れ放題となった山は、地盤が緩み地滑り等の自然災害をももたらします。人間と自然とが共存してゆくために、山の手入れは必要不可欠なのです。こういった問題を少しでもみなさんに広く知っていただこうと、今4代目となる松尾さんは、2代目から続く本業の傍ら、多摩産材の端材を利用し取組されています。多摩地域は杉・檜が多く、丸太から角材を製材した時にでる半円形の端材を主に再利用します。実は木材としてそこ(半円形の端材)がもっとも良い場所なんだそうです。

post_strong_01 端材として使われないのであれば焼却するだけです。 post_strong_02

一重に焼却と言っても都で指定された焼却炉や焼却方法で行わないと、においの問題などで近隣のかたがたに迷惑をかけてしまう話にもつながってしまうため、多摩産材の端材を有効活用する松尾さんの取組は、みなさんに共感していただく取組となりつつあります。

hazai_image_02

hazai_image


post_strong_01 時計やギターのマグネットこれらも全て端材なんですよ。 post_strong_02

と目を輝かせて説明される、松尾さんの誠実な姿勢がとても印象的です。端材と言われてしまう木材でも、加工してしまったらまったく端材とは思えない立派な製品となります。しかも、宮大工技術が活きた製品だけにクオリティーは折り紙付きです。しかし、木工製品プロダクトを行ううえで、地域との繋がりはまだまだ活性化されているとは言えないようです。

post_strong_01 展示会等へ出展し、まず社名をしってもらうことが先決だとかんがえています。そうすれば、「松尾木工所」はなにをやっている業者なのか知ってもらえるきっかけにもなります。 post_strong_02

と松尾さんは話します。私も「たま工業交流展」で松尾さんとお会いし、木工の高い技術力でオリジナル製品を作られていることに目が留まりお話させていただいたのですが、多摩産材を使用し、しかも端材である事がとても印象的でした。

hazai_L

端材イメージ

post_strong_01 これも端材なんですよ! post_strong_02

と持って来ていただいた木材が厚くて大きいこと。これで端材なのですから、自分の中で「端材=あまり使えない木材」というイメージが、「端材=何の問題もなく使える木材」といったイメージに変わりました。こちらも同様、使われなければ燃やすだけなのです。多摩での林業が活発な時代は、端材に対する意識は低かったのでしょうけど、多摩産材の魅力が低下してきている今だからこそ、本事業に負荷のかからない所で無理なく「多摩産材の有効活用」と「宮大工技術の継承」を推進することに大きな意味があるのだと感じます。そもそも宮大工と認定される基準はあるのでしょうか?

post_strong_01 基準というか技術ですね。今の大工さんは釘が打てる人が少ない、ノミを研げない、ノコギリを研げない、宮大工とは、昔ながらの大工の技術の最高峰を意味します。なるべく釘を使わない技術も持ち合わせているんです。しかしながら、今では、宮大工の技術を活かした建築物を造る機会自体が減っていて、2、3年に一回くらい神社仏閣の補修があるといった感じです。 post_strong_02

matsuosan_01

「松尾木工所」4代目 松尾 功さん

「松尾木工所」の本事業は、葬具製作でありますが、需要は年々減ってきている現状もあります。昔は自宅葬が多く自分のうちから出棺する形式であったため、全てが1点物で製作されていました。現在は斎場での葬儀がメインであるため祭壇等の大物から小物まで全て揃ってしまっています。確かに便利にはなったのですが、ある面悪循環をもたらす部分もあります。そういった現状と向き合いながら、歴史に裏付けされた宮大工の技術と現代の技術を融合させながら、どのように多摩産材を使用する事業を展開して行くのかが「松尾木工所」のこれからの課題でもあります。

そのひとつの解決策として、松尾さんは、日の出町商工会の紹介により東京都中小企業振興公社の助成金事業によりレーザー加工機を導入して多摩産材、叔父、宮大工である(有)三協木材からの端材を使用してオリジナル商品作成をされています。ギターのマグネットや、木の名札等は先にも紹介しましたが、直近では、イベント等の参加賞として配布する大会名の入った木のキーホルダーや、東京の木につける樹名板(木の名札)を作る100万本計画(東京には約100万本の木が生えているそうです)なども進行されています。なかには、金属加工屋さんとのコラボレーションから産まれたプロダクトもあります。こちらも、金属加工で出た端材と、木工業から出た端材で海外旅行者向けのお土産として販売されています。ひのきの最高級品の端材が使用され、日本人同様海外旅行者のかたがたにも「ひのき」の匂いは大変好評とのこと。そして「made in JAPAN」の刻印がとても誇らしく感じます。

matsuomokkou_LASER

レーザー加工機を導入

made_in_JAPNA

「木工×鉄工」のコラボレーションから産まれた、日本の観光土産

今後は、「松尾木工所」の課題でもありますプロダクトデザインをデザイナーさんにお願いしていきたいと松尾さんは考えます。

post_strong_01 こういったデザインの物を作って欲しいという依頼があれば問題なく作れますし、プロダクトに応じた材料や技術の選択もアドバイスできる。肝心な、つくってもらいたいもののデザインやアイデアがうかばない。良いプロダクトデザインが集まれば、もっと宮大工の技術を知ってもらったり、多摩産材を広く使って行くきっかけがたくさん産まれることにもつながるんです。 post_strong_02

「松尾木工所」では、誰でも簡単に作れるキットも販売予定しているので、こういった製品を通じて宮大工の技術をしっていただくきっかけづくりも行いたいとのことです。

「松尾木工所」のもうひとつの取組として、組み立てやヤスリ掛けを障害者のかた(身体的ハンデをもつかた)にお願いしている側面もあります。できるだけ障害者のかたが作業しやすい様にプロダクトの設計を行い、簡単に作れるよう配慮されたりもします。松尾さんは、のちのちは障害者のかたにデザインもお願いできればと考えます。そうすることで、障害を持つかたがたが携われる仕事の幅がひろがることにつながり、またひとつ地域の課題解決を図る取組となるのです。

matsuosan_02
ここ東京多摩日の出町から「多摩産材の有効活用」と「宮大工技術の継承」そしてなによりも、松尾さんが掲げる「松尾木工所」の看板に配された「一丸」という、1代目「きこり」の松尾 一丸さんの多摩産材に対する想いを胸に、これからも木工技術を追求し広く伝え、松尾さんの穏やかで温かみのある人柄が、みなさんを惹きつけ丸く一つにつなげてゆきます。

「松尾木工所」ホームページ

関連記事