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伝統技術を現代テクノロジ―に活かし、脱下請けを目指す「泰興物産」
熊野筆ですが、筆の歴史は古く、書道に携わる方にとっては書道用の筆、化粧品業界にとっては化粧筆と種類も多彩です。そして今回紹介します泰興物産様のパートナー企業としまして、広島熊野町の有限会社瑞穂さんがあります。水彩画筆や化粧筆、義歯をつくる際に使用する歯科技工士用筆と言う特定分野の筆も製造し、180余年受け継がれた熊野の伝統技法を守り、選毛・整毛・加工・組立・検品まで社内一貫体制を整えた企業様となります。


熊野筆
泰興物産の化粧筆

 そして、ここ立川の泰興物産様は、CADと3Dプリンター、そして成形機を揃えたプラスチック製品製造業です。40年程前に化粧品容器印刷、その後成形業が主となり前社長の時代に熊野の筆メーカーさんと一緒に仕事をする事となり今日に至っています。

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CADと3Dプリンターを操作する丸田さん


そこで、泰興物産丸田部長に今回、お話を聴きました。「普段はメーカー依頼の化粧品容器や化粧筆の一部を造っています」と彼女の一言。それから、泰興物産様が開発し製品化された、デザイン的な商品「それが新しい開発製品の男性用洗顔筆」です。

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写真の製品は特許出願中です


開発までの経緯はの問いに、
post_strong_01 「景気の波に左右される厳しい中で何かしなければ」と8年前に都の「ものづくりデザイン道場」に漠然と当時参加しました。しかし7年前からは、現社長と社員が業界全体の危機意識を共有し、今度は、「脱下請け」を目指し3年前に同じ、都の事業化チャレンジ道場「売れる製品開発道場」に再度参加したのがキッカケです。 post_strong_02

と丸田さん。当時3名参加されていましたが、一度も休むことなく立川から大田区へ通い続けたのは丸田さん一人です。この道場での製品化に至った同社の取組は東京都中小企業振興公社城南支社本年発行の「新たな発展の軌道を求めてvolⅴ号」冊子にも大きく取り上げられています。

引き続き丸田さんに、熊野筆による男性向け洗顔用筆と言う新分野を製品化までに繋げた話を伺います。
post_strong_01 前職場が、IT系の会社でして、そこで仕事観を鍛えられました“当時扱える人が少ないワークステーションOS上の仕事で、午前様は当り前の職場であり、そこで、「前向きに最後までやり通す」事を学びました。その後現職場でも、新しいCADソフトや3Dプリンターもトコトン使い基本を知った上で工夫を重ねています。 post_strong_02
とさりげなく彼女丸田さんは話します。

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一年以上使い込んだ3Dプリンター


新しいテクノロジ―を使いこなす能力と、そして現在の仕事で化粧筆の一部分をつくっていた事、さらに都の道場参加の刺激によって男性用洗顔筆の事を思い付いたそうです。

post_strong_01 女性用洗顔筆は以前から有りますが、それは、木製軸で筆を押さえる所が金属系のものも有り、水に強いプラスチックが活かせないかなぁ  post_strong_02
と思っていたそうです。 

仕事柄、容器や形状から先に考えるそうです(普通は、熊野筆関係者のお話ですと、筆の製品はその仕事柄、筆の穂先から考えるようです)。最初デザイナーさんに四角形状コンセプトを伝え、その後試行錯誤しながら彼女がCAD上でデータに手を加え3Dプリンター出力を行いました。広島の有限会社瑞穂さんでは、普通「丸系」筒状軸に毛を植えるのですが、彼女が考えた筆は、丸ではありません。筒状軸が四角形で穂先も角張っていました。当初は「こんな形は出来ない」と言われたそうです。しかし、日帰りで広島と立川のトンボ帰りをもこなす彼女の仕事振りと前向きさは、広島の有限会社瑞穂の皆さんと気持ちは通じていたため、なんとかトライしていただけ、四角プラスチックに角張った穂先を植える事が出来ました。

これが可能になった事で、色々なイメーシが一気に膨らみます。その後、試作品を化粧品メーカーの担当者が、興味を示し「この様な形の化粧筆が出来るならそれを商品化して扱いたい」と思わぬ話があり、それから会社全体を巻き込み、何とか製品化に間に合わせることができ、初めて自分達のオリジナル商品への道が開け、脱下請けへの大きな一歩となりました。 「こう言う事をやっている」と自社の製品として見せるものが有れば、周りの目に留まります。この経験をもとに、男性用洗顔筆構想を熊野町のパートナー先との良い関係も有り、現実化に向け動き出しました。

丸田さんは、洗顔筆も男性が持ち易く、転がらないで、穂先が横に倒しても地に触れない、穂先は角消しゴムの様に角張っていれば細かい所まで洗えるなど、職人気質とチャレンジ精神で考えを形にして行きます。

初期試作品
開発当初の試作品


最初は上記写真の様に、絵になるデザインでしたが使用後本体キャップに戻す時、毛先が乱れてしまったそうです。その後、男性はメカニック的なものが好きだろうと思い、毛先を保護するのに工夫する事や、三角形や五角形など色々な形のものをCADや3Dプリンターで試作し、職人さんと相談しながら事を進めて行きました。

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上の画像がスライドして中から穂先が出てくる男性向け洗顔用熊野筆です。

今回の製品化は、広島熊野の伝統活性化にも繋ります。これも周りの応援や自ら進んで通っている学び場の御蔭と話していました。同社は、梱包工程の一部を福祉作業所へお願いし、又、インターンシップとしてここ3年間は多摩工業高校から、今年は産業技術高専と東京高専の2校からの学生さんを受け入れています。

余談ですが、普通専門家に依頼する、新製品の特許と意匠手続きも何と自分で書類を書き、申請しているのだからその努力に驚きです。

これからも、丸田さんの前向きさが同じ女性やものづくりに携わる方々への励みになってゆきます。

文中の参考URL
事業化チャレンジ道場:都中小企業振興公社
泰興物産様
瑞穂様

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