大木 祐二
monofarm編集室
編集長
mononfarmウェブマガジン編集長を務め、monofarmの発起人でもあります。
未来のものづくりはどういった「コト」や「モノ」であるのかを通じて、みなさんとのつながりを求めてウェブマガジンを立ち上げました。
monofarmから新しいものづくりの芽がたくさん育つことを目標に活動中。

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「緑」を中心に人とのつながりを育む「多摩市立グリーンライブセンター」
今回の取材は、monofarmウェブマガジンがテーマとして掲げています、私たちの暮らしを豊かにする「これからの‘ものづくり’」より、植物を育てみなさんの生活に「豊かさ」を提供する取組みについてご紹介させていただきます。

東京都多摩市落合に「多摩市立グリーンライブセンター(以下、グリーンライブセンター)」はあります。グリーンライブセンターは多摩センター駅より徒歩7~8分といった好立地であり、充実した商業施設やオフィスビルが併設している環境でありながら、自然が身近に感じられるエリア特性を活かし「季節の花咲く庭の"グリーンライブガーデン"、やわらかな光あふれる温室"ピラミッドギャラリー"、木目調の明るいホール"ライブホール"」で施設構成し運営されています。「みどり豊かで快適なまちづくり」をめざし、都市の緑化を推進していくための拠点施設として平成2年に開設し、みどりに関する講座の開催、緑化相談と啓発、みどりの保全活動を通じての人材育成を柱に取り組まれます。

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温室となる"ピラミッドギャラリー"が特徴的な、多摩市立グリーンライブセンター(外観)

施設スローガン「集い・憩い・学びの拠点」のもと、2011年4月1日より恵泉女学園大学と多摩市とグリーンボランティア連絡会の3者が連携し協働事業運営されており、今回恵泉女学園大学グリーンライブセンター常勤スタッフでいらっしゃいます、長谷川陽子(はせがわ ようこ)さん(以下、長谷川さん)にお話をうかがえました。

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恵泉女学園大学 長谷川陽子(はせがわ ようこ)さん

協働事業運営をすることで、施設を多様な方法で活用するようになり、多摩市だけで運営していた頃より、利用者が増加したということです。恵泉女学園大学や市民のボランティア団体の取組みの中に、グリーンライブセンターを活用した「集い・憩い・学び」をテーマとした講座を設けたことが功を奏しました。協働事業運営をスタートし今年(2014年5月現在)で4年目をむかえます。それでは、恵泉女学園大学とグリーンライブセンターとのかかわりかたについてフォーカスしてゆきたいと思います。

post_strong_01 恵泉女学園大学は文系の大学なのですが、必修の授業で「園芸」があります。教育のモットーのひとつに「自然を慈しみ、生命を尊び、人間の基本的あり方を学ぶこと」とあります。そのため「園芸」には力を入れていますが、生産性をあげるための「園芸」ではなく、生活の中に緑を取り入れ、くらしを楽しみ心養うための教養科目として「園芸」をとりいれています。
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長谷川さんが言われた通り、くらしのなかに「緑」があることで感じる「くらしの豊かさ」はあります。この豊かさは、ものがたくさんあるような物理的な豊かさではなく、生活に潤いを感じたり、また落ち着けて癒されるひとときを過ごせたりする「豊かさ」だと感じます。恵泉女学園大学ではこのような生活する上でとても大切な「もの・こと」を「園芸」を通じて学生たちに伝えています。

post_strong_01 1年生は1年間、必修の園芸の授業を受けます。必ず皆、畑に出て種や苗を植えて野菜を育てます。そして、自分で育てた野菜を収穫し家に持って帰って家族と一緒に食べたり、ご近所に配ったりもします。この経験から栽培した野菜のレシピを考える機会となったり、海外ではどのように収穫・販売しているんだろうと考えたり、環境問題に関心をもつきっかけにもつながっていきます。「もの・こと」を考える視野が広がっているようです。
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季節の花咲く庭"グリーンライブガーデン"

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このような取組みが行えることも、ここ多摩地域の特色を生かした学びのカタチだと感じます。そして、グリーンライブセンターは学生たちが「園芸」を通じて学んだことを、公で実践する場ともなります。

post_strong_01 ボランティア団体さまのイベントが行われる際にも、スタッフとして携わり緑を通じた取組みから、人とのコミュニケーション方法を学ぶ良い機会にもなっています。

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そもそも、どのようにして恵泉女学園大学は学びに「園芸」をとりいれることとなったのでしょうか?

post_strong_01 恵泉女学園には園芸を専門に学ぶ「園芸生活学科」がありました。園芸の世界ではその卒業生が多く活躍されています。時代の変遷とともに専門性の高い「園芸生活学科」はなくなりましたが、恵泉女学園大学では「社会園芸学科」に受け継がれています。そして、グリーンライブセンターで園芸実習を行うと、面識のないかたがたに声をかけられ会話を楽しむ学生の姿をよく目にします。このように「園芸」を通じて人と人とをつなぎ、そこから植物の歴史に関心がむいていったり、食に関する興味が湧いたりと「緑」を通じて学びの幅が広がります。それは、「園芸」を媒介にして人とのコミュニケーションがとりやすくなっていることだと感じています。
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グリーンライブセンターで恵泉女学園大学社会園芸学科の教員が講師を務める「園芸療法」の講座があります。「園芸」を通じた人とのコミュニケーションにより社会とつながってゆくきっかけとなり、社会復帰や社会参加、自立のリハビリテーションとして「園芸」が活用されています。このことからも、人とのコミュケーションが「園芸」を通じて生まれ、社会と人とをつないでゆく大切な「もの・こと」であると感じます。

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来館者とともに作った、イースター(キリスト復活祭)の飾り付け。

post_strong_01 卒業生は教員になったり、食や環境に関する仕事についたりとさまざまではありますが、金融関係の会社に務めながらも、会社に花壇を作り自主的に手入れをする人もいるようです。こういった幅広い対応ができることは、社会へ順応する力となっていると感じます。そして、「園芸」を通じて学んだ学生の特徴でもあると思っています。
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恵泉女学園大学の学生とともに「園芸」を通じて地域の人とのつながりを育んでいるグリーンライブセンターは設立から25年目をむかえています。建物の老朽化もあり改修が必要になるようです。今後どのようなカタチで、「園芸」を通じ地域に暮らす人々とのコミュニケーションの場を形成されてゆくのか。そこが、グリーンライブセンターのこれからの大きな目標でもあり課題ともなります。

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温室となる"ピラミッドギャラリー"(内観)


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来館者がグリーンライブセンターで作る事ができる、木の実や種を使ったクラフトアート

恵泉女学園大学の学生達が4年間を通じて楽しかった授業について毎年アンケートをとっているそうです。毎回1番人気は「園芸」の授業となるようです。

post_strong_01 長靴を履いて、麦わら帽子をかぶり、軍手をして畑に行くだけでも大騒ぎとなります。「園芸」にそんなに思い入れのない学生であっても、座学ではない自分たちで種を蒔いて、野菜を育て、収穫し食べるといった経験はことの他大切な「もの・こと」となっているようです。
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取材終了後に、恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒業生の、野村 和子(のむら かずこ)先生が講師を務めます「バラの鑑賞会」講座に私も参加体験させていただきました。講座に参加されているみなさんがグリーンライブセンターの花壇の土壌改良からはじめ、今きれいなのバラの花がたくさん咲くまでにいたりました。そして、自分たちの手で育てたバラの花を鑑賞しながら先生との会話にも華が咲きます。

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「バラの鑑賞会」講座のようす(講師:野村 和子先生)

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「バラの鑑賞会」講座に参加者されている方々が育て上げた見事なバラの花々

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「バラの鑑賞会」講座のみなさま

変化が求められるこの時代に、これからも変わらぬ「もの・ことの本質」が「園芸」にはあるように感じます。いつの時代も人と人、そして社会と人とのつながりは、「緑」を中心に形成されてゆくということです。

「グリーンライブセンター」なるほど、「緑を中心に人とのつながりを育む」そういう「ひと・もの・ことづくり」の場でもあるんですね。

平日のお昼どきには、企業で働くかたがたが「ライブホール」にお弁当を食べに来られます。
ここでもまた緑に囲まれ、人とのつながりが生まれていきます。

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人々の憩いの場となる"ライブホール"

多摩市立グリーンライブセンター
恵泉女学園大学

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